ひょっとして皆さんご存じないですか?chumby。チャンビーと呼びます。チャンビー。常時WLANに繋がっていて、PCで設定したスケジュールに基づいて、自動的にアプリケーションをダウンロードして勝手に機能が変わる据え置き型のかわいいデジタル端末です。当時、米国では名の知れた台湾系アメリカ人のギーク、バニーが開発したもので、ITの歴史に名を残すエポックメーキングなデバイスと言われてました。
あれは、2008年の秋、未だiPhoneが発売されたばかりで、誰もがスマートフォンがこれほど普及するとは思っていなかったあの頃、アプリケーションを取り込むだけで、いろんな物に変身するという魔法のボックス、そのチャンビーが日本で発売されました。米国のチャンビー社と交渉し、サンディエゴに技術者を派遣し日本語化を行い、日本で発売にこぎ着けました。慣れないハードウェアの輸入の手続きや、非関税障壁とも言える輸入商品に課せられる技適などもクリアし、販売用のECサイトも作り(これは本業ですが)満を持して発売した訳です。ところが!なんと、なんと、その後すぐに、iphoneやAndroidのスマホが出てきて、同じような機能が、一気にスマホで取って代わられてしまいました。
今となっては、AppStoreだのGooglePlayだのと、言っておりますが、当時はまだそれらはマイナー中のマイナーで、そのコンセプトの母ともいえるチャンビーのウィジットマーケットには、チャンビーをマルチファンクション化するアプリケーションマーケットが存在しておりました。まさに時代を先取りするコンセプトだったものだったので、一部アメリカと日本のギークの間では話題になりました。多くの人は、アプリケーションマーケットなるものの存在を知らなかった訳で、その可能性に気がついていたのは、ごく少数のギークだったと言っても良いでしょう。また、当時は、デジタルサイネージという概念も出始めた所で、チャンビーはデジタルサイネージにも向いていたこともあり、多くのメーカーさんの研究所に研究用として売れてました。
まあ、IDの設定もPCが必要なこともあり、決して一般消費者に売れるようなデバイスとは思えませんでした。売れてもアーリーアダプタ層だけだろうと。一般消費者に売れるには、複雑すぎるその設定手順にそう思っていたわけですが、一気にそのギャップをスマホが埋めてしまい(とはいえ、一般の人がすべて使いこなせてはいないわけですが)すごい勢いで、ブラックホールのように周りの市場を吸収して、いろんなものに取って代わろうとしています。
何事も遅すぎるのはもちろんダメですが、早すぎてもダメなんですよねえ。ちょっと先を行くのがいい。チャンビーはまさにそんな端末でしたが、大きな時代の変化に飲み込まれてしまったようです。うーん。残念。
なお、いまだに弊社のオフィスにはいくつかチャンビーが転がっています。私の家では、かわいい目覚まし時計として、楽しく時間を教え続けてくれてます。
2014/03/24
ハードウエア・ガジェットの衰退は少し昔のハードウエアリップの衰退とオーバラップしています。提供するサービスの内容ではなく、単純にハードウエアで提供している事が仇になってしまっているのですよね。でもそれだけで済まない含蓄がありますよね。有り難うございます〜。